新たにリモートワークを行う企業が検討すべき準備事項

新型コロナウイルス騒動で、首都圏ではリモートワークを全社的に始めている企業が目立ってきました。筆者も過去リモートワーク経験があり、その時のナレッジを紹介します。リモートワークの実施を検討している企業向けに本記事がお役に立てれば幸いです。

リモートワーク適用可能な職種の検討

リモートワークは、職種によって向き不向きがはっきりとします。まずは、自社の業務がリモートワークに適しているか検討しましょう。

リモートワークに向いている職種

プログラマーやデザイナーなど、PCを業務に使用している職種であれば、会社に出社せずともほとんどの業務は自宅で作業可能です。また、事務職も業務ソフトや書類作成にPCを使う会社であれば、自宅でも問題なく作業が行えるケースが多々あります。
意外にも、営業職もリモートワークが向いています。お客様先での打ち合わせが必要な場合は止むを得ず外出することもありますが、会社に戻って行う作業はほぼ自宅でも可能なものばかりなので、直行直帰が行いやすいです。

リモートワークに不向きな職種

従業員が職場に物理的に常駐する必要がある職種は、リモートワークに不向きと言えます。店舗の販売員や工場の作業員が該当します。これらの職種の場合、時差通勤など、リモートワークとは別のアプローチを取るべきでしょう。

業務ツールの最適化

リモートワークに限った話ではありませんが、企業の業務を行う上で必要な要素は大きく以下の3点に分類できます。リモートワークでは、従業員同士が対面せずとも業務を進めていけるように、業務ツールを最適化していく必要があります。

コミュニケーション

上司や同僚と、以下のようなやりとりを行います。文面だけでなく、必要に応じて音声やビデオで打ち合わせする必要も出てきます。

  • 出退勤連絡
  • 進捗連絡
  • 課題共有
  • 意思決定
  • 雑談

日頃のコミュニケーションには、ビデオ、音声機能を備えたチャットツールを使用するとよいでしょう。無料で使えるものがたくさんあります。

成果物の作成環境

ドキュメントやプログラムを作成する業務では、成果物を作成する環境が必要です。リモートワーク向けに、後述の自宅設備や会社設備の整備を行います。

成果物の保存環境

多くの業務では、アウトプットとして成果物が生み出されます。(プログラムや画像、作業報告書など)
これらの成果物を保存する環境を用意します。
成果物の用途に応じて、以下のようなツールを使用するとよいでしょう。コミュニケーションツールと同様、無料で使えるものがたくさんあります。

なお、業務上の機密情報を扱う場合、セキュリティルールは事前に整備しておく必要があります。(ログインに多要素認証を使用する、他者にファイル共有する時の手順を整備する…etc)

自宅設備の用意

自宅でリモートワークを行う場合、以下の物品を用意することが望ましいです。

インターネット回線

インターネット回線は、家庭用のベストエフォート回線で問題ありません。できれば、通信容量による速度制限のかからない固定回線が望ましいです。

PC

セキュリティを考えると、業務用のPCはプライベート用PCとは使い分けたほうが良いでしょう。タワー型PCは持ち運びできない、場所を取るといったデメリットがあるので、弁当箱サイズのコンパクトデスクトップやノートPCが最適です。
快適に作業が行えるように、最低限以下のスペックを満たしたものが望ましいです。

  • CPU: 4Core以上
  • メモリ: 8GB以上(16GB以上あればなお良し)
  • ディスク: SSD 240GB以上

PCは盗難や紛失に備えて、Windows OS標準機能のBitLockerでディスク内のデータを暗号化しておきます。

アンチウイルスソフト

これだけでは決して万全ではありませんが、最低限以下の機能を持ったアンチウイルスソフトを業務用PCにインストールしておく必要があります。

  • ウイルス対策(マルウェア、スパイウェア、ランサムウェアなど)
  • 不正通信対策
  • Webフィルタリング

Office 365

ずばり商品名となりますが、個人的には導入を非常にお勧めします。
Office製品が使えるだけでなく、作成したドキュメントをチャットツールのTeamsやクラウドストレージのOneDriveと連携できるので、チームで作業を行う業務において生産性向上に寄与します。

社内設備の用意

自宅から社内の業務システムにアクセスする要件がある場合、社内設備の用意も必要です。

インターネット回線

後述のSSL-VPNサーバを社外に公開するために必要です。複数の従業員からの接続に耐えられるよう、既存のインターネット回線とは別に用意し、法人向けの帯域保証型のサービスを使用することが望ましいです。

SSL-VPNサーバ

社内システムに外部からリモートアクセスするために、SSL-VPNサーバを設置します。
既存のルータやファイアウォールにNATルールを追加して、インターネット上からSSL-VPNサーバへアクセスできるようにしておきます。
自宅のPCには、SSL-VPNサーバのメーカーが提供する専用のSSL-VPNクライアントをインストールします。

従業員数が少ない(10人以下程度)場合、IAサーバにLinuxをインストールして、その上でVPNソフトウェアを動作させると費用が少なくて済みます。

数十人以上が同時接続する環境であれば、性能や運用性の面から専用の物理アプライアンスを導入することをお勧めします。

SSL-VPNサービス

社内に従業員個別のPCが必要になるデメリットはありますが、SSL-VPNサーバを設置する代わりに専用サービスを利用するのも一つの手です。
自宅PCと、会社PCをそれぞれサービス事業者のクラウドサーバに接続することで、ネットワーク設備を変更せずにSSL-VPN接続を行うことができます。

社内制度の整備

リモートワークを行う上で一番重要なのは、社内制度の整備です。従業員の間で不平等が起こらないよう、主要な社内規則はリモートワーク時でも運用ができるようにしておくべきです。

勤務時間管理

出退勤は、チャットで自己申告する、PCの作業ログを提出するなど、日々の記録を残す方法を取ります。

残業代

実際働いているかは性善説でしか判断できないので、時間外労働による残業代ではなく、一律みなし残業手当てを支給するなど、「勤務時間」を基準にしない給与体系を検討する必要があります。

評価の基準

リモートワークの場合、評価の基準は勤務時間で測ることができません。
どのような成果を挙げればどの程度の評価になるか、評価の基準を成果物の数値で明確化する必要があります。そのため、基準を定める管理職の役割はより重要になります。

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